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2年ほど前か、ちょうど今日のような、夏も盛りのころでした。
当時はよく大阪モノレイルに乗って、太陽の塔(神)を拝みにいったものです。
駅に着いたモノレイルに乗りこんで、つり革につかまるや、横に「乗りつけて」くるひとがいます。すこし屈強な風のそのひとは、わたしの隣のつり革につかまって、ひじをぐいぐいと押しつけきます。わたしはさっとひるがえり、席に着きました。すると、車内はがらんと空いているにもかかわらず、わたしのひざに、自分のひざを押しつけながら、またぐいぐいと、体を押しつけてくるではありませんか。
ははん、とわたしは思いました。どうやら、わたしがこのひとの気分を害したらしいのです。モノレイルに乗りこむときに、順番を抜かしたのか、わたしのかばんがそのひとにあたったのか、そんなところでしょうが、わたしの行動になにか文句があるようです。
「何なんですか。」わたしは訊きました。するとそのひとは、「はぁ?」車内に響きわたる大声で返答をかぶせてきます。「何なんですか。」ともう一度。「は?」とまたもや間髪入れずにかぶせてきます。要は嫌がらせです。
しかたがないので、「ケスクヴヴレ?(何なんですか。)」と、フランス語で訊いてやりました。すると、「は?」の一辺倒だったのが、「!!...外国のかた?...これは失礼した。」ときました。さっきまでわたしは日本語で訊き続けていたにもかかわらず、です。続けて「韓国のかた?」とくるので、「いや、フランス人だ。日本語を勉強している。」と英語で言うと、通じたもよう。車中そのひとのとなりで、わたしは日本語のこむずかしい原稿を読みふけり、降りぎわに、「今日はどうもありがとう。」と手をさしのべると、「がんばってください。」と、屈強な手でがっちり握られました。わたしはこみあげる失笑をおさえきれず、駅のホームでふきだしてしまいました。にもかかわらず、閉じたドアーの向こうで、そのひとは、にこにこと手をふりながら、モノレイルに揺られて、消えていきました。
このひとの一つ目のおかしさ。それは、「外国のかた」なら、なぜか赦す、という点。外国人は日本の礼儀を知らないから、わたしがなにか失礼なことをしたとしても、わたしが外国人だということになれば、それはしかたないこと、という意味で赦されるのでしょう。これだけでも十分におかしいですが、まあ、よいでしょう。このひとのおかしさの醍醐味はその先にあります。
二つ目のおかしさ。それは、日本の礼儀を知らないからこそ赦した外国人に対して、それは「失礼した」と謝ってしまう点です。礼儀が通じない世界で生きるとみなしたひとに対して、なぜ、礼を失したことを謝る必要があるのでしょうか。
わたしが外国人で、そのひととは異なる礼儀の世界で生きているから、わたしがそのひとに対してした行為はそのひとによって、赦されました。他方でそのひとは、わたしの(悪い)行為に対する仕返しで、自分もまた嫌がらせか意地悪、要は悪行をしていたという意識があったらしく、わたしの行為が赦された瞬間、仕返しという名目で正当化されていた自分の行為が、余剰の悪となり、それを処理すべく、謝罪することになったわけです。
でも、あるAという行為を受けて、それに対してA'という行為で仕返しした場合、Aという行為が赦されるなら、A'という行為も赦されるべきです。べき、というのは、そもそもA'は、Aに対して悪である点で等価な行為と位置づけられたうえで構成され、なされているからです。
なので、そのひとは「失礼」ではまったくないのです。外国人であるわたしに対しては。にもかかわらず出てしまった、そのひとの「失礼した」ということばは、けっきょくそのひと自身に、いかに、自分が意地悪をしているな、という自覚があったかということを表しています。
モノレイルの改札を出たわたしは、その日も、「国際化」の未来とともに光り輝く「神」に向かってゆっくりと歩を進めていったのです。
(春木)
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西中、春木、ふたりの自作自演歌手から成るロック・アンド・ロール・グループ。グループ名は、ラテン語のRecto Verso(おもて、うら)に由来。ひとをはっとさせる、かつ親しみやすいメロディをつむぎ、地域、時代にとら われず広く長く世に歌い継がれる歌をつくりだすことがヴィジョン。英語、フランス語、日本語でつづったオリジナルレパートリーは30曲、ストック曲は 120を越える。東京を中心に生演奏会を展開。楽器、録音器材にこだわりぬいた100%手づくりの音源もききもの。現在、岡田徹(ムーンライダーズ)のプ ロデュースのもと1stミニアルバム(2012年8月発売予定)を制作中。
使用録音マシン:Telefunken V72a 1960年代製、Telefunken V76 1960年代製、Telefunken U83 1950年代製、Microtech Gefell UM92S 1990年代製、Telefunken D19 BKHI 1960年代製、AKG B200 1960年代製、AKG D19CRCA 77DX 1940年代製、Neumann W444sta 1970年代製、Eckmiller W85
ヒストリィ:
2006年10月 西中と春木が出会う。
2007年1月 「Recto Berso」結成、および初めての生演奏会をする。
2007年3月 インターネットラジオ「噂のギグ」に出演する。
2007年6月 インターネットラジオ「噂のギグ」に出演する。
2007年11月 吉川忠英氏らとセッションする。屋敷豪太氏も同席。勉強する。
2007年12月 EMI主催オーディション 第1回Awake Sounds Audition 準優勝をおさめる。
2009年2月 ビーイング音楽振興会主催 2009BADオーディション最終選考通過
2009年3月 アルバム完成にむけて、録音をいっしょうけんめいにする。
2010年7月 アルバムのプリマスター版が完成する。
2010年10月 音密団により発掘、育成される。
2011年7月 BELAKISSのメンバー全員に、プリマスター盤を手渡す。